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朝比奈まふゆのモデルになった事件があるのではないか【プロセカ考察】

【注意】

本記事は以下の要素を含みます。朝比奈まふゆのストーリーを一読したうえでの閲覧を推奨します。

・「プロジェクトセカイ カラフルステージ feat. 初音ミク」のストーリーにおける重大なネタバレ

暴力的な内容、および考察

 

 

 

 

 

 

~ブラウザバック用の余白~

 

 

 

 

 

 

 

 はじめまして。期間限定ガチャにナース姿のまふゆが登場し、ひとつピンと来たことがあったので書いてみます。もしかしたら僕が見つけられていないだけで、すでに同じ内容の考察をしている方もいらっしゃるかもしれません。

かわいい、けど

 2024年9月時点では、朝比奈まふゆは母親に「勉強の邪魔だから」という理由でシンセサイザーを捨てられる、勝手にパソコンを見られる、スマホを壊されるなど、熾烈な教育虐待を受けています。

教育虐待(きょういくぎゃくたい)とは、児童虐待の一種で「教育熱心な親や教師などが過度な期待を子どもに負わせ、思うとおりの結果が出ないと厳しく叱責すること」を指す。子供の人権を無視して勉学や習い事などを社会通念上許される範疇を逸脱して無理強いさせる行為である。(Wikipedia教育虐待」より)

 教育虐待という概念はまだ新しく、2011年に武田信子教授がその言葉を使うまでは「教育ママ」のような概念が代替的に扱われていたようです。そして、この教育虐待は行き過ぎた能力主義、学歴偏重主義の影響下にあるれっきとした社会問題であり、ときに残酷な事件へと発展します。その一つに、おそらくこれが朝比奈まふゆの家庭のモデルではないか?というものがあったので、時系列なども含めまとめてみました。

 

事件について

ずばりこれです。

滋賀医科大学生母親殺害事件(しがいかだいがくせいははおやさつがいじけん)は、2018年1月、滋賀県守山市の30代の看護学生が、母親を殺害後に遺体を解体して遺棄した尊属殺事件である。加害者は被害者である母親から、長期に渡る苛烈な教育虐待を受けていた。(同記事から引用)

 以下、加害者の母親を女性A(本事件の被害者)、加害者を女性X(本事件の加害者)と表します。こちらはまふゆの家庭よりかなり強烈なようで、具体的な虐待として

・Xが幼少期の頃から医学部に進学するよう迫っていた

Xのスマホを取り上げAの監視下で勉強をさせた

Aによる監視は年々強くなっていき、医学部に受かるまで9年もの間、Xに浪人生活を強いていた

というような状態が続いていたそうで、赤くハイライトした部分はまふゆ母を想起させるような内容です。医学部進学を願う母親、行き過ぎた教育、精神的に追い詰められた子供の構図は、プロセカの開発時期的にここから来ているのではないかと考察します。ただ、全面的にこの事件がモデルになっているとは考えにくく、例えば同事件のWikipediaソース元の判決文なんかを見るに、AがXに暴言を吐いたり暴力をふるったりといった行動があるんですよね。一方、まふゆ母の虐待は歪んだ愛情という側面が強く、あくまで心理的虐待の範疇にとどまっています(DVのような身体的虐待は一度も描写されていません)。詳しくは後述しますが、個人的には、一般的な教育虐待の類型を調べ上げ、赤文字で記したひな型のディテールを詰めていったと考える方がしっくりきます。

 

時系列

事件の詳細が正確に明かされたのは2020年の3月頃(判決が出たタイミング)である一方、プロセカのリリース開始日は2020年9月30日。一度それぞれ整理してみます。情報についてはプロジェクトセカイのWikipediaを参照。

 

2014年ごろ……プロセカの企画が始動。しかし当初は難航しており、方向性も定まっていなかった。

2017年ごろ……『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のプロデューサーを務めていた近藤裕一郎がプロジェクトに加わり、「現実世界に軸をおいた青春群像」という方向性が示される。

2018年……滋賀医科大学生母親殺害事件が起こる。近隣住民への調査などにより、同年中に事件の概要(医学部受験を迫られていたなど)が報道され始める当時放送されていたもののアーカイブ)。

2019年……2月、各ユニットのコンセプトや設定を元にキャラクター原案を作成。8月30日には『マジカルミライ2019』にて企画始動を発表。ティザーサイト、ティザームービー、オリジナルキャラクターである星乃一歌の一部デザインを含むティザービジュアルを公開したほか、公式Twitterも公開。

2020年……3月に判決が下り、事件の詳細も明らかになる。同年にはすでにプロセカは各種プロモーションや事前登録などに動き出しており、9月30日に公式リリース開始。

 

 プロジェクトセカイの構想が定まってきたのが2017年で、滋賀の事件発覚が2018年6月。このころから徐々に憶測や情報が広がっていき、先述の医学部進学を願う母親、行き過ぎた教育、精神的に追い詰められた子供という図は、アーカイブを見る限りでは同年内にできあがっていたように感じます。そして2019年の2月にキャラクター原案が作成されるとなると、本事件が朝比奈まふゆというキャラクターのモデルになったという考察も、時系列的におかしな話ではないのです。

 ただ、2020年以降の判決や、後に出版された本『母という呪縛 娘という牢獄』は時期的に参照しづらく、そこの間を補完するため&もっと普遍的な事例にするために、当時の報道からは得られなかった情報や文脈を過去の教育虐待の事例から取り入れていったのではないでしょうか。

 

最後に

冒頭でナース姿のまふゆについて触れました。しかし、過去に医学部への進学を強要され、人権を大きく侵害された状態で9浪させられてもなお合格せず、仕方なしに看護学生になった女性がいたことを想起してゾッとしたのは私だけでしょうか(少なくとも記事執筆時点ではこの事件とナース服を結びつけていた人はいなかったはず)。

 彼女はもうひとりの朝比奈まふゆだったのか、あるいは朝比奈まふゆがもうひとりの女性Xだったのか。これからも彼女らのような境遇におかれる子供たちはいるのだろうか。そんなことを考えました。