今後、月報(?)は〇月×日に何があった、というフォーマットではなくて、その月に見たものや考えたことを雑に箇条書きでまとめていく方向でいきます。飽きたらやめます。
・so-vits-svcについて
so-vits-svcはディープフェイク的な声の模倣である一方、既存の切り貼り式人力VOCALOIDは「素材そのものの声を使用する」という点で一線を画しており、コンテクストや用途によって使い分けがなされるのではないか という話をしました
— Lixy (@YesoftenmeansNo) 2023年4月8日
畏れ多くも、Twitterのスペースで拙作について触れられ、「so-vits-svcのようなAIが台頭してきたことを、既存の切り貼り人力VOCALOIDをしていた人はどう感じているのか」といった旨の質問を受けました。
僕はレぺゼン音MAD作者ではありません!あくまでも一人の音MAD作者の一意見にすぎません!と前置きしたうえで上記のツリーに記載した内容のことを話したと記憶しています。正直、今後もっと使いやすいツールとしてAIがやってきたらみんなそっちに流れそうではありますし、僕も必要に応じてやるだけやってみると思います。
・死者の倫理
故人をAIで(勝手に)再現、模倣することの倫理的是非についての論文がこの前出ていました(https://t.co/mXtCShvJqC)。昨年に伊藤計劃・円城塔の「屍者の帝国」を読んでいたこともあり面白かったです。
現在の日本の民法においては、「出生から死まで」が人が権利を有する主体としての範囲であり、その意味で、「死者の権利」なるものは直接には認められていない。端的にいえば、法の範囲内において死者に人権はない。(62ページ3行目)
論文の筆者曰く、
現時点では、日本の法律でこうした行為を規制する根拠はありません。おそらく将来的には、「自己情報コントロール権を、死後一定期間にまで拡張する」(著作財産権のように)かたちで、死者の権利を法的に緩やかに認める方向になると思っています
— SATO Keisuke (@ks__sato) 2023年3月29日
とのことです。死者に権利が認められるようになったら存続が危ぶまれる音MADジャンルとかあるんでしょうか(不謹慎)。
・vaporwaveの文脈の変遷
日本におけるVaporwave、どういう過程で「批評性」「諧謔性」が抜け落ちて「エモ」「チル」に置き換わっていったのか変遷が気になる
— あ (@sute_aca_) 2023年3月24日
安直な人間なので、僕は単に「言語と違ってビジュアルとか音楽は感覚的に伝わるから、そこの良さが一人歩きしていったんじゃね」と思いました。
・野球のルール
「強い選手にボール当てた方が得じゃない?」みたいな感性は野球知らない人として正直めっちゃ分かっちゃうんだよな
— Lixy (@YesoftenmeansNo) 2023年3月24日
その逆パターン(ボールが当たったら出塁できるなら、避けないほうが良くない?)を体育の授業でやって怒られたことがあるので
バーチャルYouTuberの人がこういう発言をして炎上してました。でも、正直僕は野球知らない身としてめちゃくちゃその気持ち分かるんですよ。倫理的是非はさておき、世界大会みたいにどうしても勝ちたいシーンでなんで強い選手を怪我させるような人がいないの?みたいな。
そこを「倫理的でない」みたいな論調で批判してしまうのはとても不親切だと思います。倫理であれ論理であれ理由があるなら知っている人が教えてあげるべきですし。僕はVtuberのこと基本的に嫌いなんですが、そこはちょっとかばってあげたいです。
・「意味のなさ」の意味
「幽霊文字の「彁」とか「色の無い緑の考えが猛烈に眠る」みたいな「存在しない/意味を持たない」概念は、それを見出された瞬間に存在して意味を持ってしまう」的なジレンマってなんか良い感じの名前ついてそうだけどなんなんだろう
— ん (@coolbizhead) 2023年3月20日
この記事を書いている2023年4月現在、円城塔の「エピローグ」を読んでいるんですが、かなりこれに近い感覚があります。言語的に、人間の感覚的に決して認識できない高次の存在が自由気ままにバトルとかしているんですが、それを言語として/小説としてエンコードしてしまうと、途端に意味が通るようになってしまいます。意味不明さってジャーゴンなんですかね?
・音MAD作者、SF好き説
昨日人と話してて思ったんだけど、ミステリーはトリックの種明かしが話の終着点である以上そこの明示に注力する(≒感想がわりと1つに定まりやすい?)のだけど、SFは世界観から突飛である以上、「その世界だったら自分はこうする」みたいなifの妄想が広がりやすくて、僕の性に合っているのかなと感じた
— Lixy (@YesoftenmeansNo) 2023年3月8日
僕にとっての音MADって、基本的にifを描く二次創作なんです。このアニメのこの世界ってこういうこともあるんじゃないか?こういう解釈もできるんじゃないか?みたいな妄想が止まらなくなって作品として発露している感じです。要は元ネタが一意に定まらないことが大切なんです。
元ネタが一意に定まらない・・・?結局皆さんの作ってる音MADもそうじゃないですか!ただのハンバーガーチェーンの宣伝用ピエロがエロあるよって笑ってたり、任意のアニメキャラが神っぽくなってたり、いくらでも改変や妄想の余地があるんです!いや、余地がないのに無理やり妄想してる場合すらあります!!これはSFの相似形なのかもしれません。
・AIみたいなツールって情報格差が広がるだけじゃね
chat-GPT、研の人たちは「この文章をかしこまった表現で書いて」とかやらせて論文を書かせたり文章校正をさせてるらしくて、これ向こうがメチャクチャなことを言ってきたらある程度は気付けるからうまく乗っかりながら使えるのであって、普通にこのツール格差広げるなってなった。
— 雑魚と化した村上椎奈bot (@asakuso1919) 2023年3月17日
個人的にはDeepLとかも似た匂いがするんですよね。そのまま日本語突っ込んでも主語が勝手に意図しないものに置換されたり、多義的なワードがちょっと違うニュアンスで変換されたりすることがあります。なので訳文に知らない単語や熟語、イディオムが出てきた際はちまちまググって必要であれば修正したりするんです。
僕が気づけてないだけで直したあとの文章がまだまだ変な可能性も全然あるので、なんだかそもそもできる人のための時短ツールなのかなって感触です。
・差別のレトリック
「男性器のある人が女性スペースに入ってくる、はトランスジェンダー差別の現場で言われる定型句です」とは
— 仲💮村 (@natukusa) 2023年3月8日
「レターパックで現金おくれ、は全て詐欺です」ってくらいセットだと思ってた方がいいです
今初めてそんな話題を知った、ついさっき初めて知ったならまだ引き返せます
このツリー、マジでそうなんですよ!!!マイノリティの権利を認めることは別にトランス女性が女湯に入ったり、女性トイレに入ったりするのを容認することと決して同義ではないんです。むしろトランス女性当事者が1番その加害の可能性について敏感だとすら思います。
・通過点
映像制作者がダサいと思っていることの一般ウケのよさって想像以上のものがあって、そこらへんボカロ系リリック動画から学べるものかなりありそうだと思っている
— ふっくん (@fukkunmania) 2023年4月1日
この言葉が僕に刺さってる理由って、未だに中高生のオタクを中心に流行ってるような曲への強い愛着があるからだと思うんですよね。曲の趣味を人に話して、「まだそんなの聞いてるのかよ」みたいなことを何度か言われたことがあるんですけど、どんな作品であれ人が真剣に向き合って作ったものは決して単なる通過点なんかにはならないと思っています。
・ハードSF
ハードSFが好きな心には、単に小難しいものが好き というより、カッコ良さの対象には、こちらの目線などお構いなく超然と佇んでいてほしい、むしろ人間ごときを満足させるためにカッコよく取り繕わないでいてほしい という願いが根っこにある気がする サンリオより鮭の仔魚をかわいいと思うのも同根
— Baku 麦 (@_baku89) 2023年3月29日
超わかる~~~~~!!!自分がSF読んでゾクゾクする理由をめっちゃ的確に言語化しています。人間なんてお構いなしに、あるがままにたたずんでいるから好きなんです。猫がかわいいのも同根ですね。
・ぽっと出の秀才
そもそもぽっと出の秀才は、三代続く良いところのお子さんの「天真爛漫さ」と「博識さ」の両立に打ちのめされるってのが「文化資本」な訳で、そんなの、本当の坊ちゃん、嬢ちゃん以外はその手の感情を大体持つんだから、いい加減、自分のある種の「承認欲求」を鎮める方向に行くべき、と僕も思う。
— Kawase Takaya (@t_kawase) 2023年3月23日
刺さったーーー!!いや、僕はぽっと出の秀才なんかじゃありませんが、色んな人と知り合っていく中でやっぱり「良いところのお子さん」の無邪気さというか残酷さに(勝手に)傷ついたことがすごくあります。あんまり誰が悪いとかではないんですけどね……
でもやっぱコンプレックスだな〜〜。いわゆる「良いところ」に生まれてた世界線の僕をチラ見してみたいです。でもそれはそれで大したことなさそうで、自分の凡庸さを再確認させられそうなのでやっぱりいいです。
・愚行をする権利
教員がそうであるように、福祉を目指す若者もピュアで「福祉は善きもの」「人は指導を受け入れるもの」を疑わない。ケインズ的な大きな政府が実現する高福祉社会は、反面「福祉押し付け社会」でもある。ミルが『自由論』で言及したが、社会に迷惑をかけない限り人間には愚行をする権利がある。
— 寧音(ねおん) (@bandneon1228) 2023年3月12日
社会に迷惑をかけない限り人間には「愚行をする権利」がある!!!ミルは昨年大学の講義で扱っていたのでふわっと覚えています。そのうち読んでみたいなあ。
・「青春」を終えて
本邦、楽しいのは中学高校の青春時代だけだよ、そのあとは労働やら何やらでろくなことないよ、社会問題は山盛りだし日本は斜陽だよ、みたいなストーリーがたぶん強いので、青春の儚さの強調とそれゆえの価値の暴騰はわかるんだけど、わたし個人は中年になってからのほうがだいぶ楽なのよね…
— てらまっと🍅 (@teramat) 2023年3月4日
僕はいわゆる「青春」を楽しめなかったがわの人間なので、年上の方のこうした話にすごく救われています。本当にありがとう。
今月は以上!